安曇野の屋敷林
長いこと松本平で仕事をしていると、色々なことが気になってくる。
今回は安曇野の風景である。
四季折々の美しい田園風景が様変わりする中で、特に気になるのが屋敷林の消滅である。
自然発生的に、必要に任せてつくられた屋敷の周囲の庭が、いつしか安曇野ならではの「型」となり、昔から守り継がれて来たのが屋敷林である。
しかし家が暗くなる、手入れが煩わしいなどの理由で伐採され、消滅してしまった屋敷林をいくつも見てきた。
そして時には屋敷までもが無くなり、代わりに安曇野のよさに憧れた新しい住人が来て、現代的な沢山の家が建ち並ぶことになる。
そのこと自体はいい事だろうが、戸建て分譲地の場合は田甫も同時に無くなっていくことが多い。
見慣れた風景が失われてしまうことに寂しさや焦りを感じる話を聞く。
以前から安曇野の原風景を残そうと、再発見や保存活動をしている仲間から誘いがあった。
毎年の活動の一つ、安曇野屋敷林のフォーラムがあるがそこにパネラーとして参加することになった。
僕の役目は民家の再生の実例と建物の庇と屋敷林の必要性を説明することである。
そこで模式的なスケッチを用意した。
微力ながら安曇野の魅力と、建築を設計する者と暮らす側の役目を伝えられるようにと願っている。
せっかくの機会だから少しでも多くの人に聞いてもらいたいものである。
川上