下小屋
この仕事をして40年を越えた。木造の住宅が多い。
今でこそ図面は何とか描けるようになったが、
造ってもらうには職人さんとのコラボが欠かせない。
図面ができるといよいよ夢をカタチにする始まりだ。
先ずは製材所と大工さんの加工場へと向かう。
製材所では木の香りいっぱいの中で職方と木取りを、
大工さんの加工場では墨付けの相談をする。
この段階は担当者とお施主さんも一緒だ。
ここでは材木を前にして刻み方などの昔からのやり方を説明する。
ふと作業小屋を見上げると何とも簡単な造りにビックリする。
余った木材での最低の仕事ですぐにでも潰れそうにみえる。
聞けば40年以上は経っているという。
強風や大雪の時などに乗り越えた話を懐かしそうにしてくれた。
一緒に来た所員と『目からウロコ』で、下小屋の造りを見上げながら
よく耐えたものだと感心する。
今でこそ鉄骨や大規模の立派な加工場も増えたが、
昔は下小屋を持つだけでも一人前になれて精を出して働き始めたのだろう。
でも仕事はできても稼ぎが伴わなかったと思う…。
職人さんに話しかけると『話し下手』で『ヒトがいい』人が多い。
造る立場の職人さんは設計図と建築基準法に従ってちゃんとやるしかないだろうが、
もっと簡単でいい方法があるのに聞いてもらえそうもないと諦めたり
首をかしげる人は多いのだろう。
改めて設計をする者としてこういう小屋組や職人さんから学ばなければと思う。
川上