下山の思想
暮れに五木寛之の「下山の思想」という本を知った。本人の話もTVで聞いた。
自分のことを思えば目からウロコである。
人生の目的があるならまだまだ高みを目指して前に進まなくてはいけないのに、
思うように体は動かず、気力も無くなってきた。
この歳になって親も先輩も同じ道を辿ったものだろうとつくづく思う。
考えてみればたとえ低くても山の頂上には辿り着いて、
周りの景色も眺めて下りてきているのである。
下り道ではそれまでの心の整理やある種の達成感と目標を思いながら、
今まで気づかなかった景色を眺め、ある種のゆとりを持って下ってきている。
そこでは頂上を知らずに足元だけを見て登ってくる者とすれ違う。
そんな彼らには声を掛け応援したくなる。先のことは教えずに。
まさに社会や人生そのものだと思う。
限界に挑戦するアスリートとは違うナマの自分と向かい合う気分だ。
挫折や落胆では無い、取り巻きへの感謝や充足感、
そこからささやかな希望のようなものが見えてくる。
不十分でも後ろ向きでもない自分に向き合うのである。
この歳でまだまだ早いかも知れないが、そんな心境の新年である。
川上