納屋もどきの塀
松本市街から北へ5キロ程、トンネルを抜けた山里に民家群の村がある。
今では松本まで通勤するベッドタウンの集落であるが、ここも民家の空き家が目立つ。
その一つを調査に行った。街道に佇む立派な店蔵である。
かつては何でも売っている萬屋さんだったが空き家になって20年になるという。
一見規模や質が普通の民家とは違うが空虚感は否めない。
それでもいつもの様に当時の造りや生活の様子を想像しながら詳しく調べていく。
予想は裏切らなかった。紛れもなく素晴らしい建物だ!
立ち会って頂いた持ち主にその感動を伝え続けた。
その勢いに呆れた様子だったが、少し解ってくれたようだ。
大きな主屋の裏の中庭に面して瓦屋根の納屋があり近づいてみる。
入口の引戸を開けるとそこは裏路地であった。
然も軒まで土壁である。塀なのである!
隣からの火除けの丁寧で洒落た防火壁なのだ。ロマンと遊び心と真剣さが伝わってきた。
今ではそこまでやる人はいないだろうとも…
川上