ふるさとの山の木を
青年期まで安曇野の民家で育って松本で暮しているお施主さんが、
ご実家の築120年程の民家を松本に移築して暮したいとのご希望で計画が進んでいる。
今の時期、遠くに雪を纏った北アルプスが望める地に建つ大きな蚕室家屋である。
久しく使われていなかったが、それを現代の生活に合う様に移築再生し、
かつ自分の山の木も使って建てたいというもの。
とはいえプランが難しく、1年の歳月が流れた。
近くの山には祖父が植林したという唐松や赤松が見事に育っていた。
冬のこの時期を見計らって切り倒し、製材乾燥をして今年から工事にかかろうという計画である。
まだしっかり設計が決まっていない為、細かい製材が出来ないが
必要な材木は切り出すことが出来て嬉しく思っている。
少し前までは当たり前のやり方であったが、今ではなかなか出来ない事である。
山では若い木こりが手頃な値段で受けてくれて手際よく伐採、玉切りし、
其れを近くの製材所に運んでいた。
地元の木で家を建てようと官民挙げて補助施策もあり追い風の様だが、
値段の高く良質な木材管理も出来ずまだまだ軌道に乗っていない。
とにかくかつての当たり前の山側と里の連携やシステムが普通に機能することを望んでいる。
そんな事を思いながら帰りの車で山麓線を走っていると、猿の群れが果樹園に入り、
落ちているリンゴをかじっていた。
急いでカメラを向けると皆逃げていってしまった。猿から見れば人が怖いのだろうか?。
とはいえまだまだ自然と動物の関係が残っている里山の風情である。
川上