秋深し
今年、異常な猛暑と風水害に見舞われたが、それでも、いつも秋が訪れた。
「天高く野山もみんな冬支度 」だ。
先日のこと、使われなくなって久しい小さな茅葺きの民家を見てほしいと相談をもらった。
待ち合わせ場所の駅前に着くと親子で待っていてくださった。早速合流して現地に向かった。
山里にひっそりと佇むそれは、南庭に前栽畑を持っていた。かつては日本のどこにでもあったはずの風景である。
ちょっと違って珍しく特徴的なのは、枝垂れ栗の木と日本ミツバチの巣である。
誰も住んでいないというのに畑や周りも綺麗に手入れされていた。
貸している近所の人がやってくれていると聞いた。
民家は築120年ほどのものであった。型的な広間型だ。
かなり痛んでいて、誰かが住まない限り存続は難しいし、移築もコストがかかるとみた。
よほどの熱意がある人か趣味人が継いでくれないと存続は難しい。壊すとなれば建物のお葬式だけでもした方がいいとも。
諦めがついたようだった。
一方、付属屋の土蔵をちょっとのぞいてみると、こちらは保存状態がいい。
傷んだところを直すだけなら、お金はそんなにかからないから何とか使ってほしいと伝えた。
その後、当主が近くに持っている山を見せてもらった。
松茸の留山という。手入れがされていない松の木と雑木が広がっているが、これは建物の用材にもならない。
当主も久しぶりに訪れたようで、眺めながらしばし昔話をした。
晩秋の里山であった。
川上