恩師の出版記念
新年早々我が恩師、降幡廣信氏の「降幡廣信の世界」
という分厚い写真集が建築資料研究社から出版された。
建築写真家の第一人者の一人である秋山実氏が、長年撮り溜めてあった建築写真の中から
厳選したものが降幡先生の言葉を添えて建築作品として載っている。
秋山実氏の建築写真作品集でもある。
設計や工事の先頭に立って指導をされ足掛け60年、木造住宅を中心にその数恐らく1600件以上、
内民家再生は400件を越える仕事を残し、指導を受けた設計事務所員は90名を超え、
今尚現役で活躍している。
何と90歳である!。誰も真似できない偉業である。
先生はこの機会にと、かつての所員やお施主さん職人さんなどにお礼が言いたいとのこと。
これが最後の機会でもありサイン入りで皆に本を贈りたいという。あくまで謙虚である。
ささやかではあるが関係者50人程が集まって出版祝いが開かれた。
会場は勿論先生が手がけた民家再生の食事処である。
当時のお施主さんにより上手く使い込まれていて何ともいい感じである。
久しぶりの仲間は当時にタイムスリップして土間や囲炉裏の回りに集まって
あちこちで声を弾ませている。
夕方から始まったそれは、まず氏の約1時間の講演会から始まって、その後食事会である。
僕はマイクを持って廻り、食事を摂りながらのたくさんのお祝いや思い出の言葉を頂戴した。
懐かしい話の他に初めて聞く話も多く、新鮮で感動的であった。
美味しい食事と談笑の2時間半は早かった。
最後の締めの挨拶で長野県民藝協会の会長が、
『先生は誰もやってこなかった民家再生という新しい道を開かれた。
それが今や大きなうねりとなっている。その業績は日本の建築文化全体として
もっと評価されるべきで、我々はその為の活動をしていくべきだ。』と話された。
急に言われたのでチョット驚いたが確かにその通りだとも思った。
そして誇りに思うと同時にこれからまだまだ恩師の教えを胸に、
より良い建築を目指さなければいけないと改めて思った。
とにかくこの出版記念会は楽しさと共に自分を見直す機会ともなった。
川上