叫び
最近ある茅葺き小屋と土蔵が解体される現場を見た。


茅葺きはかつてお蚕の作業小屋で、土蔵は家財道具や書籍、味噌の収蔵蔵だった。
以前建物の寿命は人の6倍だろうと言ったが、どちらも築100年以上は経って見た目は共に古く見えるが、茅葺はともかく土蔵はまだ20歳の青年のようでしっかりしている。
土蔵造の素晴らしさを話したことがあるが、勿体無いことだ。
機能や造り方では物置小屋の範疇を超えて火事や防犯・貯蔵などには最高で長寿命の建築である。
これからの利活用を考えるとそれ以外に、音楽室、作業場、趣味部屋、店舗などなど今ではとても造れない貴重で高級な建築として再利用できるのだが・・。

先日事務所に欅の木片が持ち込まれた。家具の端材だろうが何と年輪がムンクの『叫び』とそっくり!。
叫びとは恐怖、怒り、驚き、悲しみ、感動・・の姿かもと。
ムンクのそれは聞こえぬ声を聴いて思わず耳を覆った姿だというのだが、
土蔵のショベル機での解体は、悲鳴が聴こえるようで思わず耳を覆いたくなった。
建物に心があるならこちらの都合ばかりでなくその声を聞くべきではないか。
せめて建物を壊す前にお葬式をしたらとも思う。
これまで本当にお疲れ様でしたと祈って。


川上