佐久市の養蚕民家
先日、使われなくなった民家の相談を受けて、佐久市前山に向かいました。
長野県では、養蚕が盛んだったこともあり蚕室造りの民家が多く見られます。
今回伺ったところも立派な蚕室造りの民家でした。
到着すると、立派な長屋門が出迎えてくれました。
民家自体は昭和7年に建てられ、現在築85年で、蚕室造りの特徴である総2階建てです。
建材はすべて地元の木を使ってつくられたそうです。
特徴的なのは妻面から見える貫の部分で、軸組の美しさ、力強さが見て取れます。
軸組の力強さとは対照的に、建具の桟や2階の手摺のデザインがとても繊細で、
見ていて飽きません。
川上が民家の概要などを持ち主の方に説明している間に、実測を行いました。
内部を見てみると、蚕室造りというだけあり、蚕室として2階の大部分を要しています。
来客時の寝室となっていた2階の上座敷、下座敷とは段差によって空間が分けられていて、
当時の仕事と生活の距離の近さが建物によく表れているなと感じました。
1階のおえ、上座敷、下座敷も保存状態がよく、大切にされてきたことがよくわかります。
また、上座敷やおえからは、庭と屋敷神の祠がバランス良く見えたり、象徴的に配置された
松の木が見えたりと、部屋と庭の関係を大切にしていたこともわかりました。
実測は、とりこぼしのないよう、必死に測っていたつもりでしたが、
時間がかかりすぎていることや不正確なところがあると注意を受け、
反省とともに自分はまだまだだということを実感する機会となりました。
この民家は、持ち主の方が遠方にお住まいなので、
持ち主の方が再生して住むということはとても難しい状態にあります。
それでも、ただ壊してしまうだけではもったいないという思いから、
今回かわかみ設計にご相談いただきました。
この民家の価値を確認してこれからの活用方法を提案する、もったいない
情報として発信する、というところまではかわかみ設計でお手伝いできますが、
その先はこの民家の価値を理解してくれる方に出会えることを願うだけです。
菅原