かわかみ建築設計室

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その8 民家はそのままで美しい。


前回民家はその造り方も使われ方も合理的で素直だと語ったが、今の時代には寒さ・暗さ・不便さと言った不合理な点も多々あり、改良しなくてはいけないことが多い。
活かすか残すかという判断は極めて難しいと思うが、その行為全体が『再生』だ。


どんな設計でも先ず『用と美』という意識が常に働く。使い勝手の良さと美しさの両立を求める。

ところで『民藝』では『用の美』といって実用を極めるモノはそのままで美しいということだが、『美しいものが美しい』という言葉になる。つまり美しいモノを作りたいという以前にそのものが絶対的に美しいということである。


民家も民藝と同じでその傾向がある。それ自体が無意識に美しいのである。

例えば富士山や花や小鳥などそのものは決して美しいとは思はず、そのものが美しさを放っていているだけである。


とは言え民家を活かすのならそのままではダメで、再生をするのであるが、その際『用と美』という意識で設計する。つまり両立しなくてはいけない。

そのものが持っている魅力を維持しながら更に魅力を増す様にと知恵を絞るのである。


どうもその詰まるところは『おのれを殺す』という姿勢かと思う。
その際自分の好みを感情に入れず何時も静かな自然体で臨むということだ。

民家の声を聞き、そのために何ができるかの一点に集中することだと思う。

ところが思った通りにいかないことが逆に想像以上の結果になる。その時自分の力以上の効果が出てホッとすると同時に無力を感じる。

何時も民家再生は新築と違い『そのままで美しい』という前提で臨んでいるがどうも間違いではない様だ。


川上



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松岡フラスコ
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