助かった民家
解体される民家が運良く移築再生される予定になった。
松本の東南の山裾の広大な敷地に堂々と佇む本棟づくりの民家、廻りは離れや門や庭園、そして蚕室や土蔵群がお寺の伽藍の様に整然と健全と佇んでいる。普通の民家ではない。
かつては庄屋だった屋敷構えで、丁寧に手入れがされていて保存状態がいい。
あることは知っていたがまさか取り壊すとは知らなかった。
奇しくも少し前に本棟づくりのホンモノの民家が欲しいという若者夫婦から相談があって探していたところだった。
これは!と思いそれまでの民家の持ち主に強引にお願いして貰い受けることになった。
解体の工期も頂いた。新しい持ち主にとっても幸運である。
それにしても建物主屋だけでも120坪と大きすぎる為、正面の形は活かしながらその3分の2だけを移築再生するというもの。この際と使えるものは出来るだけ使うべく木材は勿論、屋根や樋の銅板、大戸や雨戸や舞良戸、格子などの建具の他雀踊りや懸魚まで貰えた。お陰様で工事費も節約できる。やり甲斐もある。とりあえず残すことは出来たが、これからプランや予算を工面しなくてはいけない。施主にとっては大事業であるが応援しかできない。
昨今の民家ブームがホンモノならこういう機会がもっとあって、この国の住まいのあり方が納得いくものであって欲しいと切に願うものである。
川上