かわかみ建築設計室

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川 の都合

川上恵一の故郷の長野県塩尻市平出のせせらぎ

塩尻市南東の山裾にあるわが平出村は5千年の歴史がある。
知る人ぞ知る日本三大遺跡のひとつで、今でも縄文人の子孫がここに生活し続けている。なぜなら、集落に沿ってせせらぎが流れており、文化発祥以来、食事や飲み水の生活用水として使わせてもらっているからだ。

まさに、この僕がそのひとりである。
当然のように毎月の「川浚い」や時には石垣の手入れをしてきたが、感謝をこめて正月には松飾を供えて水神様を祭ってきた。

水元の川上はそのまま飲み水となるが、川下では少しずつ汚れてしまうので、川上の人は川の様子を気にしながら使ってきた。川浚いはただ流れに沿って熊手でかき回すだけでその瞬間は濁ってしまうが、すぐに川床がきれいになり透き通った清水が流れ下る。

水温は1年中13度で沢ガニやカワニナが生息し、春にはセキレイや鶯が鳴き、夏にはオニヤンマがせせらぎを住処としている。僕も子供のころは慣れない野良仕事の後でも川の水で顔を洗いながらそのまま喉を潤したものだった。友達にその話をすると、水道が普及した今「川の水を飲むとは信じられない!」とびっくりされる。

特別の場所であることに気付いたのは大学時代であった。以来、家の前に流れるこの川を大切にしなくてはと強く思うようになった。

ところが嫁に来た女房はせせらぎの音が気になって眠れないというではないか!!
その話にあきれたのは僕の仲間である全ての村人であった。
40年も経った今は……当たり前の様に毎晩ぐっすり眠っている。

川浚いをしていると舞い上がって下に流れていく小石やごみが、どこかで再び川底に溜まって川床が上がってしまうのではないかと心配になるが、この川ではその心配は要らないのである。ところが松本市内の中央を流れる女鳥羽川は数年おきに浚渫している。

石ころや泥、枯草や枯れ木が流れを堰き止めてしまうからである。人間の都合で人工的に利水や治水を計るも、川にとってはさぞ迷惑な話なのであろう……。

長野県松本市の女鳥羽川

女鳥羽川の浚渫工事

 

ひるがってみれば、自然はありがたくそして畏れ多いもので、人間の英知の及ぶものではないとつくづく思う。

川上恵一の故郷の長野県塩尻市平出の里山の風景

平出の風景

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