かわかみ建築設計室

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民家から学ぶもの

古臭いがどこか懐かしい。有ってもいいが無くてもいい。たくましくておおらかだ。
一般的な古い民家のイメージであろう。
でも沢山の民家を見ていると改めて新鮮だと感じる。

民家が普通にあった時代、そこでの暮らしぶりはあたりまえに切実で正直であった。
また造りは技や素材と共に気持も込められていた。
ゆえに耐久性もさることながらプラン上も最も機能的で無駄がなかった。

長野県松本市の古民家再生の住宅

ところで建築設計を考える上で最も大切なことは先ずは民家の「模写」であろう。
既存の民家を忠実に測量記録や施主への聞き取りなどを繰り返し、復元する。
するとまるで当時の造り手の気持ちとなり、建物を通して対話している気分になる。
そして改めて驚きや尊敬や感謝を込めて、その質の高さに近づける喜びを感じられる。
確かに模写という行為ではそれを超える事はできないが、限りなく近づくことが出来ると思う。
それによって新たなモノづくりへの希望が湧いてくる。
どんな仕事でも伝統を守るとは、真似から始まる新しさの創造だと思う。

建築設計でも然りである。
例えば茶室の造りだが、今更ながら千利休は越えられない。
利休は先ず大徳寺で禅を学び、茶の師の教えを聞き、何度も同じことをやり続けた。
その結果、誰にも出来なかった茶の湯やその空間を確立した。
全てはただ美味しいお茶をもてなすだけの場づくりであった。
茶道から数奇屋という新しいスタイルが生まれ確立され、日本独自の建築文化が完成した。
茶室を模写したり本を参考に作ってみるとそのオリジナルさや質の高さに圧倒される。

先ずは世の中に圧倒的に多く、誰でもが馴染みのある民家に目を向けて、
良くも悪しくも民家の本質を見極めて模写してみる。
当たり前の向こうにある新しい建築文化が創造できればやりがいがあるというものだ。

巷にはごく稀に能力者がいるが、自分の様な凡人ではなかなかそうは行かない。
だとするなら例え模写に終わってしまったとしてもいいのではないか…。
先ずは今ある仕事に全力で立ち向かうだけだ。
沢山模写をしていたら、「新しい建築が出来たぞ!」という新年での初夢想である。

川上

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松岡フラスコ
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