かわかみ建築設計室

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土について

土蔵、土間、土壁、漆喰、三和土などかつては家づくりにはかかせない素材で、人間と土との付き合いは長い。
大地のどこにでもある身近な素材で、無意識にあり、壁も土間も屋根の瓦も器も土で出来ていた。


昨今の家造りは殆どが乾式工法といって、工場で作った建材を釘で打ち付けるだけで簡単に出来上がる。
素早くでき、爽やかそうな聞こえで、一見理想のものが出来上がったように感じられる。

その反対が湿式である。主に壁や床を造るのに、土やセメントを水で練って仕上げていくものだ。
その一つに左官仕事がある。左官屋さんの最初の修行は鏝仕事ではなく土作りだという。

土に水を混ぜ時間をかけて寝かせ腐らせて、粘り気を出したり空気を抜いたり、
収縮率を下げたりして壁土を作っていく。

長野県松本市の古民家再生の住宅

長野県池田町の古民家再生の住宅

その上で熟練の職人さんが更に時間をかけ、技を尽くして丁寧に土を塗り上げてゆく。

長野県松本市の古民家再生の住宅

一度土で出来た壁や土間に触れてみるとその違いを肌で感じる。
土を通して左官職人の腕前だけでなく、心意気までもが伝わってくる。
家を守り続けながら時を経て醸し出された深みは、凄みとして迫る。
単なる質感の問題ではない。ホンモノの凄さである。

我々は大切な何かを失ってしまったのではないか。
幼い頃、田圃に素足で入って田植えをしたあの感覚や、土と格闘して
一生懸命茶碗を作ったあの感じが懐かしい…。

翻って縄文人の土器を観ると、自然や神とともに生きる姿が感じられて
改めて崇高さを覚える。

自分は建築設計という仕事でしか社会に貢献出来ないなら、
この「土」という素材の持つ本質を通して、人生の豊かさを共有したいものである。

川上

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松岡フラスコ
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